高齢者の熱中症対策は、サインを見逃さず迅速に対処すること

介護職の保健室

暑くなってくると介護現場で心配なのが熱中症。厚生労働省の統計によると、平成27年では熱中症による死亡者のうち、8割以上を65歳以上の高齢者が占めています。

高齢者を熱中症から守るためには、どんなことに気をつければよいのでしょうか。

また介護者も熱中症にならないように、できる対策をご紹介したいと思います。

なぜ高齢者は熱中症になりやすいか

高齢者が熱中症になりやすいという情報は、皆さんもどこかで聞いたことがあると思います。ではなぜ高齢者は熱中症になりやすいのでしょうか。その理由は大きく分けて3つあります。

(1) 暑さを感じにくく、汗をかきにくい

高齢者は加齢により、暑さ・寒さを感じにくくなっています。若い人は四季を通じて快適に感じる温度はほぼ一定なのですが、高齢になると暑い季節は高めの温度が快適に感じ、寒い季節は低めの温度を快適に感じる傾向があるのです。

また、加齢にともない発汗などの体温調節機能も低下。暑くても汗をかきにくく、体のなかに熱がこもりがちになっています。

(2) 体内に保持できる水分量が低下

私たちの体のなかで水分を多く含むのは筋肉細胞なのですが、高齢になると筋肉量が少なくなります。成人場合、水分量は体重の約60%ですが、高齢者では50%程度と言われています。もともと保持している水分量が少ないため、脱水になりやすいのです。

(3) 水分を摂る量が少ない

高齢者は食事の量も減っているため、食事から取り入れる水分量も減少しています。またトイレに行くことがおっくうだったり、介護をされている場合、介護者への遠慮などから水分を摂りたがらないこともあります。さらにのどの乾きも感じにくくなっているため、水分摂取量が少なくなりがちです。

これらの要因に加え、高齢者はさまざまな内蔵機能が低下していたり、持病を抱えている人も多いため、熱中症になると重症化しやすいのも特徴です。

熱中症のサインを見逃さない

体力や体の機能が低下して、介護が必要になっている高齢者は、その分熱中症リスクも高いもの。介護現場では常に意識して、熱中症のサインを見逃さないようにしましょう。

脱水状態・熱中症の主なサイン

  • 体温が平熱よりも高め
  • 顔がほてっている
  • おしっこの回数が減っている、行っていない
  • おしっこの色が濃い
  • 唇や舌、皮膚が乾燥している
  • 手の甲をつまむと皮膚が戻らず富士山ができる
  • ぐったりしている、元気がない、食欲がない
  • めまい、立ちくらみがある
  • 手や足がつる
  • 頭痛がする
  • 手足が冷たくなっている

高齢者の熱中症を防ぐ対策3つ

熱中症対策(1) 体感に頼らず温湿度計で部屋の温度と湿度を確認する

気温が高いことだけでなく、湿度が高いことも熱中症の大きな要因です。湿度が高いと汗が乾きにくくなる、つまり、汗が乾く時の気化熱で体を冷やすという、人間に備わった自然の体温調節機能が働きにくくなるからです。気温がさほど高くなくても、湿度が80%を超えるなど高めの場合は注意が必要です。

さらに最初に述べたように、高齢者は暑さや寒さを知覚する機能が弱まっています。体感に頼らず数字で温度・湿度を確認するクセをつけましょう。

熱中症対策(2) 我慢せずエアコンや扇風機を使う

高齢者にはエアコンをつけたがらない人も多いですが、そんなときは冷風が直接当たらないように風向を調節したり、扇風機で室内に空気の対流をつくるだけでも、かなり室内のコンディションを改善することができます。

熱中症は命に関わる症状ですから、少しでも暑いと感じたら、躊躇せずエアコンや扇風機を使うようにしましょう。

熱中症対策(3) のどが乾く前にこまめに水分補給

のどが乾いたと自覚したときには、すでに体は脱水状態になっています。暑い季節には2時間おきなど時間を決めて、こまめに水分を摂取するようにしましょう。コーヒーや紅茶、緑茶などは利尿作用があり、かえって水分が排出されるので水分補給には適しません。利尿作用のない、水か麦茶がおすすめです。

さらに、大量に汗をかいたときには水分だけでなく、同時に塩分も補給する必要があります。麦茶に塩少々を溶かしたものや、薄めたスポーツドリンク、経口補水液などを活用しましょう(ただし、高血圧や腎臓病などで塩分を制限している場合は医師の指示に従ってください)。

介護者も熱中症にならないための対策を

介護現場には汗をかく場面がたくさんあります。特に暑いなかでの入浴介助は、冷房をつけることもできず、暑さに耐えるしかありません。熱中症で自分が倒れてしまうわけにはいかないので、とれる対策は確実にとっておきましょう。

まず入浴介助などでこれから汗をかくことが分かっているときには、事前にしっかりと水分をとっておくこと。そして脳に近い首筋の血管をやさしく冷やすのも効果的です(ただし、氷や保冷剤などで冷やしすぎるのは逆効果)。水を含ませるだけで適度な冷感が持続するタオルマフラーなど、さまざまな便利グッズが市販されています。また可能なら水筒にスポーツドリンクを入れ、浴室に持ち込んで少しずつ飲むのもおすすめです。持ち込みが難しければ、終わった後に飲むようにしましょう。

暑い季節は介護する側も大変です。基本は夏バテしないように体調管理をして、体力を落とさないこと。冷たいものばかり食べず、栄養バランスのとれた食事を意識してとるようにしましょう。また冷房はほどほどにして、なるべくお風呂に浸かって汗をかくようにすると、体の冷えを防ぐことができます。

熱中症に限らず高齢者の体調変化に気づくためには、自分自身にも余裕が必要です。この夏はお世話する人のことだけでなく、自分の体調管理にもぜひ気を配ってみてください。

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