認知症を正しく知ろうvol.1〜種類と症状、対処法~

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認知症を正しく知ろうvol.1誰もが聞いたことがあり、誰もがかかりうる病気、認知症。でもそんな身近な認知症について、どこまで深く知っているでしょうか?治療や完治が難しいと言われる認知症ですが、早期発見でかなり進行を遅らせることができます。

あのとき認知症を疑って診察を受けていれば……そんな後悔をすることのないよう、まずは認知症に対する正しい基礎知識を身に付けましょう。

認知症の種類とメカニズム

ひとくちに認知症といっても、その原因によってさまざまな種類に分けられ、症状にも違いがあります。まずは代表的な認知症について基礎知識を知っておきましょう。
認知症の種類とメカニズム図:脳血管性、レビー小体型、アルツハイマー型

  • アルツハイマー型認知症
    認知症のなかで最も多いのがアルツハイマー型。男性よりも女性に多くみられ、患者数は年々増加傾向にあります。
    現在明らかになっている発症メカニズムは、アミロイドβというタンパク質が脳に溜まることをきっかけに、タウタンパク質が糸くずのように集まり、脳の神経細胞にダメージを与えるというもの。その結果脳が萎縮していき、記憶力や判断力だけでなく、身体全体の機能も衰えていきます。いまだ特効薬も治療法も確立されていないのが実情です。
  • 脳血管性認知症
    アルツハイマー型に次いで多いのが脳血管性認知症。男性に多く、比較的若い60歳代から症例が増えます。脳梗塞や脳出血などにより、脳の神経細胞が死んでしまうことで発症します。高血圧などの生活習慣病をもっていると起こりやすくなるので、生活改善に努めることで予防することができます。
    部分的に脳が損傷を受けるため、ひどい物忘れがあるのに理解力は高いなど、できることとできないことが混在します。また、脳の血流が良いときと悪いときがあるので、さっきできたことができなくなったりするのも特徴です。
  • レビー小体型認知症
    レビー小体型の認知症も、脳血管性と同様に多く見られる認知症。女性よりも男性に2倍ほど多く見られ、進行が早いのが特徴です。大脳皮質にレビー小体という異常なタンパク質があらわれ、脳の神経細胞が減っていくことで起こります。認知機能が衰えるほか、とても生々しい幻視、パーキンソン病に似た運動障害の症状があらわれます。
  • 前頭側頭型認知症(ピック病)
    アルツハイマー型では記憶を司る海馬から萎縮が始まるのに対し、前頭側頭型認知症は前頭葉もしくは側頭葉の萎縮から始まる認知症です。特に理性を保つ働きのある前頭葉が萎縮すると、万引きなどの反社会的な行動を起こすことも。
    それほど患者数は多くないのですが、50〜60歳代と比較的若い年代で発症しやすいのが特徴です。

これら4種類の認知症が4大認知症と言われ、全体のおよそ8~9割程度を占めています。要介護者がどのタイプの認知症なのかを知り、苦手なことやできることなど認知機能の傾向を知っておく。そうした心構えがあるのとないのとでは、介護の負担にも大きな違いがあるでしょう。

認知症の中核症状

認知症の症状といえば、もの忘れや判断力の低下、徘徊やもの盗られ妄想といった、さまざまなやっかいな症状が思い浮かぶかもしれません。多岐にわたる認知症の症状ですが、実はその性質から、2つに大別できます。ひとつは脳の神経細胞が損なわれることで直接起こる「中核症状」、もうひとつは周囲との関わりのなかで起こる「行動・心理症状(BPSD)」です。
認知症の症状

  • 中核症状
    まず最も良く知られているのは、もの忘れ。指摘されれば思い出すということがなく、記憶がすっぽり抜け落ちてしまうのが認知症の記憶障害です。
    さらに、今自分がどこにいるのか、今日がいつなのかといった、自分が置かれている状況を判断する機能が衰えてしまいます。これが見当識の低下と呼ばれる症状。知っているはずの人と会っても自分との関係が分からなかったり、迷子になったり、進行すると徘徊などさまざまなトラブルが起こることもあります。
    また、筋道を立てた思考ができなくなって判断力が低下したり、運動機能や感覚器、発声などの機能に問題はないのに、以前できていたことができなくなる失行、失認、失語といった症状も中核症状のひとつです。
  • 行動・心理症状(BPSD)
    代表的なものは、イライラなどの「不安」、ふさぎ込んで意欲を失う「抑うつ」、無目的に歩き回るなどの「徘徊」、夜中に起きだしてしまう「不眠」、ものを盗まれたなどの「妄想」。
    認知症を患えば誰もに現れる中核症状に対し、BPSDはその人の置かれている環境や、性格などによって現れ方が違います。たとえばさまざまな障害からくるストレスが、介護への抵抗という形をとる人もいれば、昼夜逆転になったり、徘徊という行動になって現れたり。
    介護する側としてはほんとうにつらいものですが、ついさっきのことも覚えていられない、ここがどこで、自分が何をしているのか分からない……そうした状況におかれれば、認知症でなくても、誰でも不安になりますよね。
    BPSDは、元になる中核症状がさまざまな形をとって表に現れたもの。困ったときは、その原因となっている中核症状は何なのかを考え、その不安を取り除くことを考えると、少し冷静に対処できるかもしれません。

認知症かもしれないと思ったら

認知症かも
認知症は詳しいメカニズムがまだ完全に解明されておらず、有効な薬や治療手段が確立されていません。しかし早期に発見できれば、進行を遅らせることができるのも事実。本人や周囲が認知症ではないと思い込むことで、不要なストレスを抱え込んで症状が悪化したり、人間関係にトラブルが起こることもあります。

もし身近な人が認知症かもしれないと思ったら、できるだけ早く診察を受けるべき。本人がどうしても行きたがらない場合は、家族が本人を連れずに診察を受ける方法もあります。ふだんの様子を医師に伝え、やはり認知症の可能性が高いという診断が下れば、そこで初めて本人を連れて行けば良いのです。

その際には「不安だから私の健康診断に付き添ってほしい」などと言って連れ出し、「あなたもついでに健康診断しましょう」といった誘い方で誘導すれば、意外にすんなりと従ってくれることがあります。だましうちのようで気分がわるいと思われる方もいるかもしれませんが、正直に告げてトラブルになるより、とにかく病気を正確に知って対処法を考えることのほうが大事。「嘘は愛情の一面」と前向きにとらえ、必要に応じて上手に活用することが、認知症とうまくつきあうコツです。

【認知症を正しく知ろう】
vol.1~種類と症状、対処法~
vol.2~コミュニケーション編~
vol.3~認知症を支える社会編~

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