「拘縮」とは、関節が固まって動かしにくくなること。寝たきりなどで過ごしているうちに、筋肉が縮んだり、病気などで動きが制限されたりして、関節が動かしにくくなる症状です。本記事では、拘縮の種類・拘縮の原因となるNGケア・拘縮ケアの6つのポイント・無理なく拘縮部を動かすポイントをご紹介します。
「これまでしていた拘縮ケアって、合っている?」
「こんなときは、どうすればいい?」
と思っている介護職の方は、参考にしてみてくださいね。
参考文献:『オールカラー 介護に役立つ! 写真でわかる拘縮ケア』田中義行著
拘縮の種類5つ
はじめに、拘縮の種類をご紹介します。拘縮は、原因によって5つに分けられます。
- 筋性拘縮
- 神経性拘縮
- 皮膚性拘縮
- 結合組織性拘縮
- 関節性拘縮
以下、1つひとつ詳しくお伝えします。
筋性拘縮
拘縮のなかでも、もっとも多いのが「筋性拘縮」です。脳卒中や心筋梗塞などで寝たきりになったり、骨折などの治療のために関節を長期間固定したりすることで筋肉が縮んでしまい、関節が引っ張られて動きにくくなります。
神経性拘縮
「神経性拘縮」は、脳神経の病気などの後遺症で筋肉が麻痺して起こります。痛みを避けようとして同じ姿勢を取り続けることなどが原因の場合もあります。
皮膚性拘縮
「皮膚性拘縮」は、火傷や手術などによって皮膚がひきつれ、引っ張られることで関節が動きにくくなります。
結合組織性拘縮
「結合組織性拘縮」は、皮膚の下にあるじん帯や腱膜(けんまく)、腱(けん)などが収縮することなどによって、手指が曲がるなどの症状が起こります。
関節性拘縮
「関節性拘縮」は、関節の組織に傷や炎症が起こることで、関節が動きにくくなります。
その他の拘縮
代表的な拘縮の種類には含まれませんが、パーキンソン病になると脳の障害で筋肉が硬くなり、「固縮(こしゅく)」と呼ばれる運動障害が起きます。
これはNGケア|高齢者が拘縮になる原因3つ
寝たきりのままだと筋肉が縮み、拘縮が進んでしまいます。適切なケアを行うことによって、筋性拘縮や神経性拘縮などの予防や改善が可能ですが、間違ったケアをすると、かえって拘縮につながってしまうことも。ここでは、拘縮の原因になってしまうNGケアをご紹介します。
原因1.ポジショニングが適切でない
「ポジショニング」とは、寝ているときや座っているときの姿勢を、安全で快適な状態にすることです。筋性拘縮が起きている場合に、適切なポジショニングがされていないと、拘縮が進む原因になってしまいます。ベッドや椅子と体の間にできているすきまにクッションを入れていなかったり、動きにくい関節を無理に動かそうとしたりすることで、痛みなどから緊張が起こります。その緊張が原因となって、拘縮が進んでしまうのです。
原因2.強引な離床になっている
ずっと寝たきりでいると全身の機能が低下してしまうため、それを防ぐためにベッドを起こす「離床」を行うことがあります。ただし、体が緊張したままの状態でベッドを起こしたり、車椅子に乗せたりしてもリラックスできません。かえって拘縮を進める原因になってしまいます。
原因3.基本の介助が適切でない
介助の際に感じる痛みやストレスなどで筋肉が緊張してしまい、拘縮につながる場合があります。介助の仕方や触れ方が適切でない場合、不快感からの緊張が拘縮の原因になることもあるので、体への接し方や触れ方などの注意が必要です。
拘縮(こうしゅく)ケアの6つのポイント
寝たきりによる拘縮を防ぐには、定期的に体を寝返りさせて、筋肉の緊張がゆるむようなポジショニングにすることが大切です。以下、拘縮を予防・改善するための6つのポイントをお伝えします。
ポイント1.首
首の後ろにすき間があると、首がそって背中側の筋肉が緊張します。枕の大きさや硬さ・位置が適切か、すき間ができていないかを、横から見て確認し、手を入れてチェックしましょう。少しでもすき間がある場合は、大小の枕を使ったりタオルを入れたりして、調節します。
ポイント2.肩
拘縮している人は、肩甲骨が寄って上半身が反り、肩の後ろにすき間ができやすくなります。そのままでは不安定な姿勢になって呼吸が浅くなるので、肩の下に手を入れてすき間がないかをチェックします。すき間がある場合は、肩甲骨を外側に開くようにし、肩と腕の下にクッションを入れ、上半身がゆるむようにしましょう。
ポイント3.腰
腰がそっていると、骨盤が前傾して呼吸がしにくくなり、全身の筋肉の緊張につながります。横から見て腰の後ろにすき間があれば、膝を曲げてタオルやクッションを入れ、すきまがないよう調整すると、楽になります。
ポイント4.ねじれ
体がねじれていると、全身に違和感と息苦しさを感じるため、筋肉の緊張を生み出します。寝ているときに、ひざなど体の一部が左右の片方に倒れていたり、首がねじれていたりしていた場合は、そっとねじれを戻し、タオルなどで調整する必要があります。
ポイント5.傾き
ねじれと同様に、体がゆがんでいることで痛みや違和感を引き起こし、筋肉の緊張につながります。左右の肩を結んだ線と左右の腰骨を結んだ線が平行になっていない場合は、体が傾いています。そっと肩を動かしたり、片足ずつゆっくりと膝を曲げ、両足をそっと動かして、骨盤の傾きを直したりしましょう。
ポイント6.すき間
寝たり座ったりしている状態のとき、マットレスや座面などにすき間が残っていると、体の一部分に圧がかかってしまいます。あらゆるすき間が痛みや緊張を生み、拘縮の原因になるため、ポジショニングをしたあとは、すき間が残っていないかを、いろいろな角度から確認しましょう。
無理なく拘縮部を動かす方法
動きにくくなっている手足を無理に動かすと骨折につながったり、逆に拘縮が進んだりしてしまいます。介助をする際は、痛みや不快感を与えないよう、そっと動かすようにしていきます。以下、拘縮部を無理なく動かすコツをお伝えします。
握り込んだ手を開くには
拘縮が進むと、ぎゅっと指を握り込んで手が開けなくなります。手のひらを清拭できないと汗や細菌の繁殖で臭うため、ハンカチやスポンジを握らせる対処法もありますが、次にお伝えする方法でやさしく手を開くことが可能です。
握り込んだ手を開くには、腕をタオルで支えて上半身の緊張をとき、そっと手首を下から支え、手の甲にやさしく触れます。親指のつけ根をゆっくり開くと、握り込んでいた指がゆるんでくるので、人差し指から少しずつ開いていきましょう。
力が入った膝を開くには
力が入った膝を無理に開くと、痛みによりかえって拘縮が進んでしまいます。まずは足首の内側にそっと手を当てて、足先を10cmほどゆっくりと開きましょう。開いた足先にタオルなどをはさみ、閉じないようにし、そっと膝を開きます。
硬く締まったわきを開くには
着替えや入浴時、わきが動かないと介助ができません。いきなり肩を外側に開こうとしても関節を痛めてしまったり、緊張が強まったりします。
また、手首をぐっとつかむと骨折してしまう場合もあるので、肩やひじに手を添えるようにしましょう。そっと腕を内側に動かし、円を描くようにゆっくりと外側に動かすとわきが開きます。
まとめ:正しい拘縮ケアで利用者様の快適な生活を守る
拘縮の種類・拘縮の原因となるNGケア・拘縮ケアの6つのポイント・無理なく拘縮部を動かすポイントをご紹介しました。
拘縮ケアの基本は、相手に痛みや不快を与えないことが基本です。ご利用者様が、少しでも安全でリラックスした状態で過ごせるよう、日ごろから適切なポジショニングを行い、拘縮の予防や改善につながるケアをしていきましょう。