高齢者への口腔ケアの方法は?困難なケースの対応法も

使えるハウツー

歯ブラシと歯の模型

口腔ケアとは歯磨きなどに代表される、お口のなかを清潔に保つためのケアのこと。自分で行うことが難しい高齢者に対し、介護職が必要に応じて歯や舌、口のなかの粘膜、義歯(入れ歯)の清掃等を手伝います。

お口のケアが不十分だと細菌が増え、歯周病や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)など深刻な病気につながることもしばしば。おいしく食べて生きることを楽しむために口腔ケアは欠かせません。しかしなかには口を開けるのを嫌がる高齢者や、認知症の影響などでケアを拒否する人もいます。

今回は口腔ケアの基本の流れとあわせ、そうしたケアが困難なケースも取り上げていきます。ぜひ日々のケアの参考にしてみてくださいね。

高齢者に口腔ケアが欠かせない理由

通常お口のなかの細菌は、唾液の持つ殺菌効果により増えすぎないようになっています。しかし加齢や常用薬の影響などで、唾液の分泌量が減ると細菌の量は増える傾向に。また多くの高齢者が使っている義歯(入れ歯)も、細菌が非常に繁殖しやすいものになります。このように高齢者の口のなかは、コンディションが悪化しやすい条件が揃いがち。

口のなかの細菌量が増えると、これらが気管から肺に流れ込んで炎症を起こす「誤嚥性肺炎」という病気のリスクが高まります。肺炎は80才以上の高齢者の死因第3位となっており、高齢者を死に至らしめる恐ろしい病気です。

そのほか、口のなかの細菌が血管内に入り感染症を引き起こすことや、歯周病菌が動脈硬化を悪化させることも明らかになってきています。また認知症についても、歯を失うことや噛めなくなることで発症リスクが高まることが分かってきました。

高齢者にとって「健康のカギ」といっても過言ではない口腔ケア。今までそれほど重視していなかったという場合は、ぜひ下記を参考にできることから取り組んでみてくださいね。

口腔ケアの基本の流れ

シニア男性の歯を磨く様子の女性介護士

【準備】
・清掃に必要な器具(歯ブラシ、ポイントブラシ、歯間ブラシ、舌ブラシ、スポンジ、ガーゼ等)を用意する。介護する人はマスク、ゴーグル、エプロン、グローブを装着する

・本人が落ち着いてリラックスできる場所で、安全・安楽な姿勢をつくる。これから行うことを丁寧に説明し、肩へのタッチングやホットタオルで顔を拭くなどして、緊張を解きほぐす

【実践・自分でできる人を手伝う場合】
(1)うがいをしてもらい、口のなかを観察する
(2)義歯を外して磨いてもらう
(3)歯を磨いてもらう(歯ブラシが口腔内の隅まで届いていない場合は、肘や手首を支えて補助する)
(4)舌を磨いてもらう
(5)うがいをしてもらい、汚れを口腔外へ出す
(6)保湿をして義歯を装着し、終了

【実践・自分で磨けない人の場合】
(1)保湿ジェル・スポンジブラシ等を使い、口のなかを潤す。口のなかを観察する
(2)義歯を外して磨く
(3)できるだけ自分で歯を磨いてもらった後、介護者が仕上げ磨きをする。上からケアを行うと誤嚥の危険性があるので、ケアは本人の目線と水平の高さで行う
(4)舌を磨く
(5)うがいができる場合はしてもらい、できない場合は洗浄をして汚れを口腔外へ出す
(6)保湿を行う
(7)義歯を装着する
(8)後始末をして終了

自分で磨けているという人も、実は「手首や肘が曲がらず歯ブラシが届いていない箇所がある」、「しっかり歯ブラシが握れていない」といった問題が起こっていることがあります。放っておくと実はよく磨けておらず、気付いたときには口腔内がひどい状態になっていたということもあるので、注意して観察するようにしましょう。

自分では磨けないという人も、握りやすい介護用の歯ブラシにしたり、歯ブラシを握った手を介護者が支えるようにすると磨けることがあります。できるだけ自分で磨けるところは磨いてもらい、介護者は最後に磨けていないところを仕上げるようにしましょう。

義歯(入れ歯)のケア

義歯には多くの細菌が付着しており、表面だけでなく内側にまで入り込んでいることもあります。歯ブラシでも清掃できますが、専用の義歯ブラシを使うほうが清掃効果が高くおすすめ。就寝中は歯肉を休ませるため義歯を外し、洗浄剤を入れた水に浸けておきます。

また合っていない義歯を使っていると、誤嚥の危険性があるので注意が必要です。口を動かすと浮いてくる義歯や、すぐ外れる義歯は合っていない可能性が。痛みがないか、よく噛めているか確認してみて、合っていない場合は早めに歯科を受診するようにしましょう。

認知症の方への対応

歯の模型を使いながら口腔ケアの指導をするようす

認知症の方が歯磨きを拒否する場合は、まず無理強いをしないことが大切。そのうえで、歯磨きに含まれる一連の動作のなかの何に拒否を示しているのかを、ていねいに探っていきましょう。

たとえば歯磨き粉がピリピリするから嫌、水が冷たいからうがいが嫌、鏡が怖い、ムリに口を広げられるのが嫌など、多くの場合拒否には何かしらの理由があるもの。刺激のない歯磨き粉に変える、うがいの水を温めるなど、「これが原因かも?」と感じるものがあれば試していきます。

また歯磨きの意味が分からないために拒否している場合もあります。毎回ていねいに説明し、伝わらない場合は介護者がジェスチャーをしたり、絵で見せることも試してみてください。ほかの高齢者が義歯を外したり、歯磨きやうがいをしているところを見ることによって、自分でできることもあります。

いろいろ工夫をしても拒否が強い場合は、無理強いせず根気よく声かけをしながら、タイミングをはかっていくようにしましょう。

口を開けてくれないときの対応法

口を開けてくれない理由は、怖い、恥ずかしいなど心理的なものと、病気からくるものの2種類に分けることができます。

【心理的なもの】
・自分の口のなかを見られたり、口臭があるのが恥ずかしいから
・痛いことをされないか心配だから
・以前痛い思いをしたから

【病気に起因するもの】
・意識障がいや傾眠のため
・口のなかに痛みがあるから

心理的な拒否である場合は、日頃からよく声かけをして「この人なら大丈夫」と認識してもらうことが欠かせません。一度痛い思いをさせてしまったりして信頼関係が築けなくなっている場合は、担当を変えることも考えましょう。

病気などの理由で口を開け続けられない場合は、歯と歯の間にかませることで口を開けた状態がキープできる開口補助具を使います。またひどい虫歯、歯周病、口内炎など口のなかの状態が劣悪な場合は、介護職だけでムリに行わず、歯科と連携してケアを行うことも必要です。

口腔ケアが学べる介護資格も

口腔ケアは通常の介助とは異なり新たに覚えることも多く、とても奥の深い世界です。興味のある方は「介護口腔ケア推進士」という資格で知識を身につけるのもおすすめ。自宅学習で介護口腔ケアの基礎的な知識を身につけることができます。さらに知識を深めたい方向けに、2020年から上級資格も創設されています。

≫こちらのコラムも参考に
「介護口腔ケア推進士ってどんな資格?難易度やメリットも」

多職種連携で健やかなお口へ

医療福祉系のさまざまな職員同士で支えるようす

口腔ケアは介護職だけで完結できることではありません。たしかに日常的なケアは介護職が担いますが、それに歯科医師による治療、歯科衛生士による専門的なケア、言語聴覚士や栄養士などの専門職が関わることで、やっと高齢者のお口を健やかに保つことができるのです。困難なケースではこうしたメンバーでチームを組んで、ケアに当たることも考えていきましょう。

ゴールへの道のりは険しいですが、「口臭が気にならなくなり、たくさん笑ってくれるようになった」「食事をおいしそうに食べてくれるようになった」・・・そんな明るい笑顔に出会えることが、口腔ケアの最大の魅力。ケアをがんばれば必ずお口の環境は良くなっていくので、ぜひ根気よく続けてくださいね。

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