高齢者の歩行介助。おさえておきたい7種類

使えるハウツー

歩行介助
高齢者の歩行シーンには、杖や歩行器を使う場合や、屋内、屋外、階段などいろいろなシーンが考えられます。それぞれに対応できるよう、介助方法もいくつかの種類を知っておきたいですね。

まず福祉用具を使う(1)杖歩行、(2)車輪付き歩行器歩行、(3)固定式歩行器歩行の3種類に加え、用具を使わない(4)見守り歩行、(5)手引き歩行、(6)寄り添い歩行の3種類も知っておきましょう。これに加えて(7)階段での歩行補助についても、安全に介助するポイントを理解しておくと安心です。

道具や介助の助けを借りながらでも自分の足を使って移動できることは、高齢者の自信になるだけでなく、さまざまな日常生活動作の土台になります。歩く意欲を持ち続けてもらうためにも、ぜひ安全に介助できる方法について知っておいてくださいね。

(1)杖歩行の介助方法

杖は必ず健側(けんそく・痛みや麻痺のない側)に持ち、患側(かんそく・痛みや麻痺のある側)の足が体を支えるのを補助します。杖はもたれたり、斜めにしたりせず、まっすぐついて使います。間違った使い方をしていると痛みが出たり転倒しやすくなることもあるので、正しい使い方をお伝えするようにしましょう。

歩行介助する場合は高齢者の患側に立ち、近い方の手で手刀をつくって患側の脇の下に差し入れて支えます。まず「前に杖をついてください」「次に右足(患側の足)を前に出してください」と声をかけます。杖と患側の足が出たら、そちらに体重を乗せてもらい、次は健側の足を出してもらうよう声かけをします。この繰り返しで一歩ずつ進んでいきます。

(2)車輪付き歩行器の介助方法

車輪付きの歩行器は、歩行器を持ち上げなくても進めるため、上半身の筋力が弱い方にも使いやすいのがメリット。ただしキャスターが付いている分、もたれかかるようにして使うと前に進みすぎてバランスを崩したり、姿勢が前傾になりすぎることが注意点です。使っているうちにブレーキが緩んでくることもあるので、使用前にきちんと効くかどうかチェックしておきましょう。

グリップの高さは腕を自然に降ろしたときの手首の高さ程度に調整しておきます。歩行が安定しない場合は、介助者が高齢者の後ろに立ち、背中側から腰の左右を支えながらゆっくり進むようにようにします。このとき引っ張ったり押したりしないように注意してください。

(3)固定式歩行器の介助方法

キャスターのついていない固定式歩行器は、歩行器を手で持ち上げて前方につき、足を前に出して進んでいきます。杖よりも安定性が高く、低い段差を越えられたり、座った状態からの立ち上がりにも便利です。

ただし歩行器に体が近づきすぎてしまうとバランスを崩し、後ろに転倒する可能性が出てきますので、介助者はそれに備えて後ろ側に立ち、目を離さず見守るようにします。

(4)見守り歩行

見守り歩行では、高齢者がバランスを崩したときにすぐに介助に入れるよう、やや斜め後ろに立って見守ります。麻痺がある場合は麻痺側の斜め後ろに。このとき、距離が近すぎると歩く邪魔になり、離れすぎているといざというとき間に合いません。近すぎず遠すぎずの距離を保ちながら、高齢者の動きから決して目を離さないようにしましょう。

(5)手引き歩行

介助者が進行方向に対して後ろ向きになって、高齢者と向き合う形で進む方法です。介助者は手のひらを上にして両手を差し出し、高齢者の手を下から支えます。高齢者は介助者の手を頼りにするので、介助者の手がグラつかないことが大切。同じ形で手首を掴んでもらったり、肘を掴んでもらう方法もあります。

姿勢が安定したら、決して引っ張らず1歩ずつゆっくり進みます。「まず右足から」「次は左足いきましょう」などと声をかけながら、息を合わせて行いましょう。

両手で高齢者を支えるため、前後への転倒を防ぎやすいのがメリットですが、介助者が後ろ向きになるので安全確認がしづらいというデメリットもあります。基本的には車いすからトイレの座面までなど、ごく短距離の移動に用いましょう。また、足もとの障害物を取り除いておくなど、動線確保も忘れずに。

(6)寄り添い歩行

高齢者の横に立って一緒に歩く形の介助方法です。まず高齢者の利き手と反対側に立ち、体を密着させます。右利きの方なら、自分の右手を相手の右脇に後ろから差し込み、左手で相手の左手を下から支えて一緒に歩きます。麻痺がある場合は麻痺側に立つようにしましょう。2人とも進行方向を見ながら進むことができる点がメリットです。

(7)階段歩行の介助方法

階段の上り下りはバランスを崩しやすいうえ、転倒すると大ケガにつながりやすいため慎重に。時間がかかってもあせらず、1段ずつ確実に支えましょう。

(a)健側に手すりがある場合
高齢者は健側の手で手すりを持ちます。介助者は患側に立ち、後ろから高齢者のベルトを持って腰を支えながら、もう一方の手で脇を支えます。まず手すりを少し上に持ち替えてもらい、健側の足を一段上げてもらいます。その後、患側の足を上げて両足を揃えます。これを繰り返します。

下りの場合も同じように行いますが、足を出す順番が変わるのでご注意を。「手すりを下に持ち替える→患側の足を一段下げる→健側の足を下ろして両足を揃える」の順で1段ずつ降りていきます。「健側の足が上」と覚えておきましょう。

(b)健側に手すりがない場合
健側に手すりがない場合は、代わりに健側に杖を持ってもらい、階段の上り下りを行います。(a)と同様に高齢者の体を支えたら、まず杖を1段上についてもらいます。続いて健側の足を一段上げ、その後患側の足を上げて両足を揃えます。これを繰り返して上っていきます。下りの場合は「杖を一段下につく→患側の足を一段下ろす→健側の足を下ろして両足を揃える」の順で、1段ずつゆっくりと降りていきます。

歩行介助のポイント

ポイント解説をする女性のイラスト
健康なときは何も考えなくてもできる「歩く」という行為ですが、実は前後左右への体重移動や足の上げ下げなど、さまざまな動作が精密に連動することで成り立っています。高齢者の動きを邪魔したり、むりに引っ張ったり、急かしたりするのは事故につながることもあり厳禁。時間がかかってもその人のペースを守るようにしてください。

もうひとつ大切なことは、高齢者の体の状態を把握しておくこと。麻痺があるのは体のどちら側か、変形や神経系の問題など、どの部分にどのような障がいがあるのかが分かっていないと、適切な介助を行うことができません。おひとりずつ体の状態をきちんと確認してから、歩行介助に入るようにしましょう。

そのほか、歩くための事前準備も忘れてはいけません。杖の先のゴムがすり減っていないか、サンダルやスリッパなど歩きにくい履き物を履いていないか、床に電気コードや荷物などの障害物がないかなどを確認し、歩きやすい状態をつくっておきます。

また背中が曲がっていて顔が下を向いている高齢者の場合、そのまま歩行介助しようとすると進行方向が見えず危険です。まずは「顔を上げていただけますか?」と声をかけ、上半身を起こしてもらって、歩き出す準備姿勢をつくりましょう。

歩行ができれば世界が広がる

杖を使って歩く男性と、付き添う女性のイラスト
食事や排泄、整容、入浴・・・日常動作には、必ず「歩く」という行為がついてまわります。つまり歩けるようになれば、できることが飛躍的に増えるということ。また、歩くことは脳を刺激し、全身運動になります。寝たまま、座ったままでいるより血行が促進され、腸の動きが良くなり排泄リズムも整います。

手すりなどにつかまって5分程度立位を保つことができるなら、まだまだ歩ける可能性は残されています。ぜひ介助や福祉用具の力を取り入れて、少しずつでも歩行にチャレンジしてみてくださいね。

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