医師も注目する「笑う効果」。免疫力を高めストレス撃退

介護職の保健室

ウイルスのイラスト
「よく笑う人は病気になりにくい」「笑いは副作用のない妙薬」といった言葉もあるように、昔から笑いと健康は大きく関わっていると考えられてきました。近年では、医学の分野で笑いの効果に着目した研究が進められ、笑うことで体内のナチュラルキラー細胞(NK細胞)が活性化し、その結果、免疫力が高まってさまざまな病気の予防や改善に役立つなど、「笑い」と健康との関係が科学的に証明されてきているのです。

ところが、ストレス社会と呼ばれる現代ではなかなか笑う機会が少なくなるだけでなく、年齢を重ねるごとに病気や身体機能の低下など悩みのタネが増えていき、笑顔でいられることが少なくなってしまいます。

しかも、最近では新型コロナウイルスの影響もあり、自宅で過ごす時間が長くなって人と会う機会が減少。発散する場もなく悩みや不安を抱えこんでしまい、以前よりも笑うことが少なくなったという方も多いのではないでしょうか。

笑顔がなくなると気持ちも滅入ってしまいますし、落ち込んだ状態が長く続くと食欲・筋力・認知機能の低下につながることも。とくに介護の現場ではとても深刻で、ご本人はもちろん、周囲にいるご家族にも悪い影響を与えかねません。

そこで今回、「笑い」が持つパワーや効果について調べてみました。毎日の生活に「笑い」を取り入れて、健やかな暮らしを手に入れましょう。

笑いと健康の深い関係。“笑わない”人に発生するリスクとは?

シニア女性の様子を見るシニア男性
「よく笑う人は病気になりにくい」なんて、一見すると迷信のようにも思えますね。ところが、実際多くの研究者によって、笑いと健康との関係性がさまざまな角度から科学的に解明されているのをご存じでしたか?

たとえば、名古屋大学大学院予防医学の竹内研時准教授などの研究グループは、介護を受けていない高齢者約1万4,000人を3年間追跡し、日常生活で声を出して笑う頻度と、その後の介護の必要性や死亡との関連について分析。その結果、「ほぼ毎日笑う」人と比べ、「ほとんど笑わない」人の要介護認定リスクは1.4倍高いことがわかりました。

また、「ほとんど笑う機会がない人」と「ほぼ毎日笑う人」を比較した研究で、「認知機能が低下するリスクが、2.1~2.6倍ほど高くなる(大阪大学大学院の大平哲也准教授らの研究より)」や、「脳卒中になる割合が約1.6倍、心疾患は約1.2倍高くなる(東京大学大学院医学系研究チームの論文より)」などの報告もあります。

こうしたさまざまな研究によって、笑いによる認知症治療やリハビリ・予防効果が、医療や介護分野で注目されているのです。

免疫力を高めストレスを軽減する「笑い」のメカニズムとは

では、笑った時の体のなかでは、いったいどんなことが起こっているのでしょうか?

驚くことに、健康な人の体にも1日3000~5000個ものがん細胞が生まれています。それらがん細胞や体内に侵入するウイルスなど、体に悪影響をおよぼす物質をしっかりと退治しているのが、リンパ球の一種である「ナチュラルキラー(NK)細胞」です。そして、このNK細胞を活性化させるのが、「笑い」の持つ大きな力なのです。

人が笑うと、免疫のコントロール機能をつかさどっている「間脳(かんのう)」に興奮が伝わり、情報伝達物質の善玉ペプチドが大量に分泌します。それによってNK細胞を活性化され、がん細胞やウイルスなど“病気の原因”を次々と攻撃。それが、免疫力アップのメカニズムです。逆に、悲しみやストレスなどのマイナス情報を脳が受け取ると、NK細胞の働きがにぶくなり免疫力がパワーダウン。いかに笑うことが大切なのか、改めて痛感させられますね。

また、笑うことで不安感やストレスを軽減する「ドーパミン」、痛みを和らげたり神経を落ち着かせる「エンドルフィン」、幸福ホルモンと呼ばれる「セロトニン」、愛情ホルモン「オキシトシン」などの脳内物質が分泌され、心身がリラックスする効果も。その結果、全身が健やかな状態に近づいていきます。

こんなにもある、笑いがもたらす嬉しい効果!

ストレスを軽減し、免疫力を高めてくれる「笑い」のパワー。でも、効果はそれだけではありません。「笑い」によって引き出される健康効果は、本当にいろいろなものがあるようです。

  • 脳の働きが活性化
    脳はストレスを受けると緊張状態になり、酸素が不足し働きが鈍くなります。逆に、笑っている時は脳もリラックスしてたくさんの酸素を取りこむことができ、脳細胞が活発化して働きが活発に。人の記憶をつかさどるといわれている海馬が活性すると、記憶力や思考力のアップにつながります。
  • 血行促進
    思いきり笑ったときの呼吸は、深呼吸や腹式呼吸と同じような状態です。笑う動作によって体内にはたくさんの酸素が取り入れられ、血のめぐりが良くなって新陳代謝も活発になります。
  • 自律神経のバランスが整う
    自律神経には、日中に活動しているときに優位になる「交感神経」と、夜間やリラックスしているときに優位になる「副交感神経」があますが、過剰なストレスや生活習慣が乱れると交感神経ばかりが優位になって興奮状態が続き、その結果、血圧や脈拍が上昇。笑うと副交感神経が優位になり、心身をリラックスモードへ。乱れた自律神経のバランスが整い、心と体が安定します。
  • 筋力アップ
    笑うという動作は、腹筋、横隔膜、肋間筋、顔の表情筋などをよく動かすので、続けることで筋力もアップ。酸素の消費量も増え、内臓の動きもイキイキと活発になります。

こうしてみると、「笑い」がもたらしてくれる効果は実に幅広く多彩ですね。日常生活はもちろん、実際の医療の現場においても、糖尿病患者の血糖値の低下、リウマチ患者の痛みの軽減、高血圧予防、脳梗塞・心筋梗塞予防など、さまざまな効果に期待が寄せられています。

笑いを取り入れるトレーニング方法

家族で笑っている様子
さて、体に良いとわかったけれども、何もないのにいきなり笑うのは案外難しいものです。そこで、誰もが簡単にできる笑うためのトレーニング方法をご紹介します。

  • 表情筋をほぐす
    人の顔には、おでこにある前頭筋や目の周りの眼輪筋、繰りの周りの口輪筋など、表情筋と呼ばれるさまざまな筋肉があります。まずはこの筋肉を柔らかくほぐしましょう。
    ・口を「あ・い・う・え・お」と、ゆっくり大きく開けます。口が裂けそうなくらい思いっきりするのがポイントです。
    ・鼻の下をぐーっと伸ばしてみたり、顔全体の筋肉を自由に大きく動かします。
  • 大笑いしてみる
    思い出し笑いでも作り笑いでも良いので、とりあえずお腹がよじれる程の大笑いを1分間続けてみましょう。けっこう大変なことですが、笑うきっかけをつかむ良いトレーニングになります。
  • お笑い番組や落語を聞く
    笑うきっかけは、何もないところでは生まれません。テレビのお笑い番組やコメディ映画を観たり、落語や漫才聴いたり、ユーモア小説を読むなど、自分からどんどん楽しいことを探すことが大事。そして面白いと思った時には、遠慮せず声に出して大笑いをしてみましょう。

大切なことは、「笑う」という動作をすること。微笑んだり、口角をきゅっと上げて作り笑いをするだけでも、NK細胞は増加するそうです。

大変な時だからこそ、毎日笑って健やかに暮らそう!

好奇心
さまざまな病気と闘い、何かとストレスの多い介護の現場。さらに、コロナ禍では感染リスクの不安と緊張感が続き、高齢者の方々はもちろん、ご家族や介護に関わるスタッフにとっても本当に大変な時だと言えるでしょう。そんななか、ついつい笑顔が少なくなり、気落ちしたり体調不良を感じたりしていませんか?

普段好きなことに興味が湧かない・心から楽しめないと感じるときは要注意!心が疲れているサインです。

こんな大変な時だからこそ、マイナス要素を吹き飛ばす「笑い」のパワーが必要です。日常生活のなかで「笑い」のタネを探しながら、視野と興味を思い切り外に向けて好奇心の羽を自由に広げましょう。前向きな気持ちやちょっとした喜び、思わず笑ってしまう楽しい瞬間との出会いが、健やかな暮らしをもたらしてくれることでしょう。

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