介護現場の声を反映して開発された介護ロボットは、介護職の負担を軽減する強い味方。以前から国は介護ロボット普及のため補助金制度を設けていましたが、実は今コロナ禍による負担増を少しでも低減するため、その内容や金額が大幅に拡充されています。
対象となるのは移乗や移動、排泄や入浴などを支援する介護ロボットをはじめ、見守りセンサーやWi-fi工事費用、インカムその他の機器まで。あなたの事業所でも便利に活用できるものがあるかもしれません。
介護ロボット補助金のほか、ICT導入に関する補助金や、導入の際に専門家のアドバイスが受けられるサービスもご紹介します。ぜひ最後までチェックしてくださいね。
介護ロボット補助金制度の概要
介護現場の人手不足対策や負担軽減のため、国は以前から介護施設などへの介護ロボット導入を支援しています。令和2年度の補正予算では、コロナ禍による現場負担増に対応するためもあって、下記の4項目で支援内容が大幅に拡充されました。
《介護ロボットの導入補助額の上限について》
装着型・非装着型の移乗支援ロボット、また入浴支援ロボットの導入費用として、1機器あたりの補助額上限100万円(拡充前は上限30万円)
《通信環境整備にかかる費用の補助額の上限について》
見守りセンサーの導入にともなうWi-fi工事費やインカムなどの導入費用として、1事業所あたりの補助額上限750万円(拡充前は補助なし)
《補助上限台数について》
制限なし。必要台数について補助が受けられる(拡充前は利用定員の1割まで)
《補助率について》
一定の要件を満たす事業所は補助率3/4を下限に、都道府県の裁量によって設定する(拡充前は必要経費の1/2まで)
このように支援内容が大幅に手厚くなっており、多くの介護事業所がこの補助金を利用して介護ロボット導入に踏み切っています。令和3年度の申請については、これから募集を開始する自治体もありますが、すでに予算枠がいっぱいとなり受付を締め切っている自治体もありますので、まずは該当する自治体のホームページで状況を確認してみてくださいね。
どんな機器が対象になる?
補助の対象となるのは、センサー感知や制御、駆動といったロボット技術が使われていて、利用者の自立や介護者の負担軽減に役立つ介護機器。自治体によっては対象機器を指定しているところもあります。
導入実績が多いのは、ベッドセンサーで利用者の起き上がりや離床を検知する見守りシステム、スタッフが自分の体に装着して使用するアシストロボット、高齢者と会話したりレクリエーション進行を任せられるコミュニケーションロボットなど。
とくに見守りシステムは夜間の巡回頻度が減るなど、夜勤スタッフの負担軽減に役立っているという声が多く聞かれます。こうしたシステムでは機器本体以外にも、Wi-Fi環境を整えるための工事や、センサーから得られる情報を介護記録にシステム連動させるために必要なソフトウェアなども同時に必要となります。
拡充された介護ロボット補助金制度ではそれらの経費も補助の対象となるので、ぜひこの機会に導入を検討してみたいところです。
参考:
経済産業省/AMED ロボット介護機器開発・導入促進事業 製品化機器一覧
補助金を受け取るまでの流れ
実際に補助を実施するのはそれぞれの都道府県となります。そのため手続きの詳細は自治体によって異なりますが、大まかな流れは次のようになっています。
- 申請者は業者から介護ロボット導入の見積もりをとる
- 自治体に補助金交付申請書、その他必要書類をそろえて提出
- 申請を受け付けた自治体で、補助の要件に適合するかどうかを審査
- 交付決定の通知を受け取る
- 介護ロボットを発注・契約・納品(工事完了)・支払までを終える
- 期限までに実績報告書を提出
- 実績報告書の審査を経て、補助金交付
- 一定期間、使用状況を報告
注意すべき点は、必ず補助金交付が決定してから介護ロボット導入を行うこと。交付が決定する前に発注契約してしまうと補助の対象外となってしまいます。また当初の計画から変更があった場合は変更申請も必要です。これをしないまま導入してしまうと、補助対象から外れてしまうこともあるので注意しましょう。
介護ロボットを活用するための注意点
最新技術を駆使した介護ロボットは、使う側にも知識や慣れが求められます。「補助が受けられるから」とあわててスタッフに相談や研修を行わないまま導入すると、現場に良さが伝わらず、せっかくのロボットが宝の持ち腐れになることも・・・。
たとえば装着型アシストロボットなどは、「装置自体の重みが負担」「装着に時間がかかる」といった不満を持たれがちな機器です。倉庫でホコリを被らせないためにも、まずは介護ロボットメーカーの担当者に来てもらうなどして研修・勉強会等を行い、使い方やメリットを周知することから始めましょう。
その後も定期的に勉強会などを行い、「こんな場面で役立った」「こういうときには不向き」といった情報をスタッフ間で共有することも大切です。
介護ロボットを現場に置いておけば、自動的に業務負担が減ったり、効率化が進むわけではありません。施設全体として積極的に活用していく体制ができて初めて、介護ロボットが本来の価値を発揮できるようになるのです。
こちらのコラムも参考に≫「スーツ型介護ロボットは本当に介護の負担を軽減する?」
その他の活用できる補助金
介護ロボットのほかにも、介護業界の人に知ってもらいたいツールとして「IT/ICT」という技術があります。ITやICTは、ソフトウェアやクラウドサービスなどデジタル技術を活用して業務を効率化することができ、共有すべき情報や書類が多い介護業界とはとも相性が良いものです。
こちらに関する補助金制度を2つご紹介しましょう。ひとつは厚生労働省が所管する「ICT導入支援事業」、もうひとつは中小企業庁が所管する「IT導入補助金」です。前者は対象を介護事業所に限定するもので、介護ソフトやスマホ、タブレット等に加え、必要となるwi-fi設置費用などを補助の対象としています。
後者は中小企業や小規模事業者等を対象としており、IT導入にかかった費用の1/2、最大450万円まで補助が受けられます。またコロナ禍に対応するための非対面化やテレワーク化を行う際には、特別枠としてさらに高い補助率で支援を受けることができます。
スタッフの勤怠管理や請求業務などの事務作業が、業務を圧迫していませんか?自施設の悩みに沿ったIT/ICTツールを導入することで、手を取られていたルーティンワークが自動化。さまざまな手書き書類をあちこちに転記したりする必要がなくなるなど、業務がグッと効率化します。
「ITに詳しくない」「どのようなツールを導入すれば悩みが解決するか分からない」という場合は、中小企業庁が全国に設置している無料経営相談所「よろず支援拠点」を利用するのも手。ITに関する専門家の派遣事業も行っており、自施設の悩みに寄り添った提案やアドバイスをもらうことができます。
テクノロジー活用で人にやさしく
介護ロボットやICTなど介護の分野で活用できるテクノロジーは、日進月歩で進化を続けています。きちんと吟味すれば、現場の負担がグンと軽くなったり、利用者様の笑顔が増えるものも見つかるはず。
「よく分からないから」「お金がかかるから」と敬遠を続けていたのでは、現場の負担は増える一方です。補助金などの情報は、待っていても向こうからやってきてはくれません。ぜひ一歩踏み出して、あなたの地域で利用できる補助金やサービスがないか調べてみてくださいね。