要介護認定、知っておきたい基本的知識

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介護度を示すプレート

介護サービスを受ける際に必要となる要介護認定。はじめての申請を控えたご本人やご家族の方にとって、困惑されることも少なくありません。適切な介護サービスを利用いただくため、今回は介護職として知っておきたい要介護認定の基本的な知識をお伝えします。(掲載情報は2021年11月時点のものです)

要介護認定の背景と認定者数の推移

介護保険案内の資料

介護保険サービスは65歳以上の方が受けることができますが、利用にあたっては、介護の必要度合いによってサービスや給付額が異なります。要介護認定とは、どの程度の介護・支援状態にあるのかを段階で区分し、被保険者の誰もが公平に介護サービスを利用できるよう客観的に判断するものです。

要介護認定とそれによって受けられる介護サービスの仕組みは、介護保険制度に基づいています。介護保険制度が創設されたのは2000年。高齢者の増加と核家族世帯の増加傾向にともなって、介護による家族の負担を社会全体で支えることを目的としたものです。

日本の要介護度別認定者数は、年々増加しています。2021年4月現在で684万人となり、制度が始まった2000年4月の218万人から比べると約3.1倍となっています。このうち、要支援・要介護1認定者数は3.9倍と、軽度の認定者が拡大していることがわかります。
(参考:「介護保険事業状況報告 月報(暫定版)」厚生労働省)

要介護認定・要支援認定とは

要介護認定には、介護保険法第7条第一項に基づき大きく分けて要介護認定・要支援認定の2種類があります。身体能力、認知能力、介助の方法・時間、医療関連の介助などさまざまな観点から介護の必要度合いを判断し、要支援認定の2段階または、要介護認定の5段階に分類されるものです。

要支援 要介護
状態 基本的日常生活を行うことはできるものの、部分的に支援が必要な状態 運動機能、思考力、理解力の低下によって、手伝いなしでは日常生活に支障が生じる状態
受けられるサービス 介護予防サービス
(要介護状態になるのを予防するための支援)
介護サービス
(日常生活を送るために必要な介護)

要介護状態区分に定義はありませんが、参考となる状態像は以下の通りです。

要支援1 動作に見守りや支援が必要になる状態
要支援2 歩行などの移動や、複雑な動作などに助けが必要な状態
要介護1 意思決定の低下がみられ、日常生活動作を行う能力が低下し、部分的な介護が必要となる状態
要介護2 食事、排せつなど日常生活動作に部分的な介護が必要となる状態
要介護3 身の回りのことや立ち上がることなどができなくなり、ほぼ全面的な介護が必要となる状態
要介護4 運動能力、思考力、理解力が低下し、介護なしには生活が困難となる状態
要介護5 意思疎通が困難で、介護なしには生活が不可能な状態

(参考:要介護認定の仕組みと手順 厚生労働省老人保健課)

各区分によって、限度額分の介護サービスを利用することができ、そのうち所得に応じて1~3割を負担します。在宅サービスや、施設の入居基準にもなります。1ヵ月あたり支給限度額は以下のとおりです。(2021年11月時点)

要支援1 50,320円
要支援2 105,310円
要介護1 167,650円
要介護2 197,050円
要介護3 270,480円
要介護4 309,380円
要介護5 362,170円

申請に必要なこと

書類作成をする女性たち
では、要介護認定を受けるためにはどのような申請手順があるのでしょう。
申請手続きは、要介護認定を受ける本人またはその家族が行います。本人や家族が申請できない場合には、ケアマネジャーなどの代理人、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者を通じて申請することができます。

申請に必要なもの

・介護保険要介護(要支援)認定申請書
申請書は、市区町村の窓口もしくはホームページからダウンロードできます。

・介護保険被保険証
65歳以上の方は介護保険被保険証、40~64歳の方は医療保険被保険証が必要です。

・マイナンバー通知書

申請認定の流れ

①申請
申請場所は、住んでいる市区町村の窓口になります。

②訪問調査
本人の心身状態や日常生活、環境について、市区町村の認定調査員がヒアリングします。実態を過不足なく正確に伝えるため、ご家族や介護スタッフも同席するようにします。普段から様子を記録しておくとよいでしょう。基本調査の主な内容は以下のとおりです。

(令和3年4月要介護認定認定調査員テキスト2009改訂版 厚生労働省より作成)

身体機能・起居動作 ・麻痺の有無、関節の動きの制限

・寝返り、起き上がり、立位、座位、歩行

・視力、聴力 など

生活機能 ・移乗、移動の介助の有無

・食事、嚥下の介助の有無

・排泄、排便の介助の有無

・歯磨き、洗顔、整髪、衣類着脱の介助の有無

・外出頻度 など

認知機能 ・意思の伝達

・生年月日、年齢、名前、居場所の理解

・短期記憶

・徘徊 など

精神・行動障害 ・感情の不安定

・被害妄想や作話、同じ話をする

・昼夜逆転

・ひどい物忘れ

・物を破壊や大声を出す など

社会生活への適応 ・薬の内服

・金銭管理

・集団適応性

・買い物、簡単な調理 など

ほかにも、現在受けているサービス、環境の状況(家族・住居・傷病・既往症等)、過去14日間にうけた特別な医療や、お困りごとなどの特記事項についてもヒアリングがあります。

③主治医の意見書
市区町村が、かかりつけ主治医に意見書作成を依頼します。

④判定
コンピュータ判定によって、どのような介護サービスをどれだけの時間行うに値するかの一次判定があります。その後、保健・医療・福祉の専門家による介護認定審議会で二次判定を行い、認定となります。

認定結果に納得できない場合

認定結果を受け取っても想定していた要介護度認定と異なる場合には、市区町村の窓口に相談しましょう。認定に至った理由を聞くことができます。
それでも納得がいかない場合には、不服申し立てをすることができます。認定結果を受け取った翌日から60日以内に、各都道府県の「介護保険審議会」に手続きをします。認定取り消しとなれば、改めて調査が行われます。

申請のタイミング・ポイントは?

床に倒れる高齢者

申請のタイミングは?

申請から認定までの所要日数は1~2ヵ月程度みておきましょう。すぐに介護サービスを利用したいと思っても、認定までには時間がかかるため、余裕をもって早めに検討することをおすすめします。

認定結果の有効期限と更新

認定結果には有効期限があります。新規の申請では6ヵ月間、更新認定は1年間です。自動更新ではないため、注意が必要です。期限満了60日前から前日までに申請を行いましょう。
更新には、新規申請時と同様に訪問調査によって身体の状態や生活環境を確認し、判定が行われます。

心身の状態が変化した場合の区分変更

体調などの大きな変化が見られた場合には、期限途中でも区分変更申請ができます。区分変更は、新規の申請時と同様の手続きを行います。

要介護認定のポイントとなるのは、心身の状態や生活環境について、正確にもれなく伝えること。些細なことでも判定に影響するため、できること、できないこと、どのくらいの頻度・程度なのかなど数字を用いて伝えることや、認知症の進み具合は、日頃から変化に気づくことが大切になってきます。また、法や制度の改正、改定にも注意してチェックしておきましょう。

介護の必要な方々にとって重要になる要介護認定。適切なサービス利用によってより良い生活を営むため、ご本人とご家族、そして介護スタッフが協力し合うことが大切になります。

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