終末期ケア専門士とは?学べるスキル、活かせる職場

資格・スキル

看取る介護士
「終末期ケア専門士」とは、看取りが近い方のケアをエビデンスに基づいて行うことができるスペシャリストのこと。一般社団法人・日本終末期ケア協会が2020年に設立、運営を行う民間資格です。

国家資格のように法律に基づいたものではありませんが、終末期を迎えた方やご家族が、できるだけ苦しみのない穏やかな日常を過ごせるよう、病気に関する知識やグリーフケア、スピリチュアルケアの知識などを幅広く身につけていきます。

最期のときを間近にした人を心の通ったケアで支える専門家、それが「終末期ケア専門士」。これからの社会で重要性を増していく資格ですので、興味のある方はぜひチェックしてみてくださいね。

終末期ケア専門士とは?

家族を慰める介護士
終末期ケア専門士の特徴は、エビデンスに基づいた終末期ケアを学ぶというだけでなく、本人や家族の心に寄り添える倫理観の育成も目指していく点です。終末期ケアの現場で、個々のケースに合わせて活躍できる専門士の育成を目指しています。

試験は全国47都道府県にあるテストセンターで、パソコンを使って行います。操作は簡単なので、パソコンが苦手な方でもだいじょうぶ。2020年に行われた第1回試験の合格率は65.6%で、3年ごとの更新制となっているのが特徴です。

もうひとつの特徴として、きびしい受験資格が設けられていることも挙げられます。医師や看護師、介護福祉士などの国家資格を持っていても2年以上の実務経験が必要に。国家資格を持っていない介護職なら、実務者研修を修了していることに併せて、3年以上の実務経験が必要です。

資格はステップアップ制となっており、終末期ケア専門士に合格したのち専用の動画配信システムで継続学習を行っている場合は「終末期ケア上級専門士」という上級資格にチャレンジが可能。組織運営・教育などチームマネジメントにおける役割を学び、組織を引っ張る立場を目指せます。

看護職の方の受験が多い資格ではありますが、介護職も第1回合格者の17%を占めており、職種別では看護職に次いで2番目の多さ。介護現場で看取りケアが重視されるなか、今後ますます介護職の受験も増えていくことが予想されます。

どんなことが学べる?

テキストを読む女性
学習は、医師や看護師、介護士や納棺師など各分野のスペシャリストが共著した公式テキストに沿って進めていきます。試験を受けなくても、このテキストを読み込むだけでたくさんの気付きがある内容となっています。

【公式テキスト目次】

  1. 概論
  2. 終末期におけるチームケア
  3. 日常生活を支えるケア
  4. 身体症状とそのケア
  5. 意思決定支援
  6. 家族ケア
  7. スピリチュアルケア
  8. グリーフケア
  9. 看取り期のケア
  10. 終末期を取り巻く社会資源
  11. 疾患別終末期ケア

できる方は独学で学習を進めてもよいのですが、かなり専門的な内容となっているため難しさを感じる場合は、日本終末期ケア協会がイラスト・図表を使って分かりやすく解説する試験対策WEB講習会(受講費用:19,800円)を開催しています。仕事や家庭と両立しながら効率良く勉強したいと考える人は、こちらの受講を検討してみるのもよいかもしれません。

取得にかかる時間と費用は?

勉強する女性
終末期ケア専門士の試験は毎年10月頃。年に1回のチャンスに照準を合わせて個々で学習を進めていくことになります。資格と実務経験を持った方でも3割以上の人が不合格となる資格試験ですので、準備期間として少なくとも半年以上は確保したいところ。できれば1年弱かけて着実に学習を進めていくことが望ましいでしょう。

次に費用面についてもみていきましょう。

  • 公式テキスト代・・・4,500円(税込)
  • 受験料・・・10,000円(別途配送料・各種手数料、消費税が必要)
  • 受験会場までの往復交通費
  • 認定登録料・・・10,000円(別途配送料・各種手数料、消費税が必要)

合計するとだいたい30,000円程度となります。これに試験対策WEB講習会の受講費用も合わせると、50,000円弱がかかる計算です。

試験に合格した後は、資格認定登録を行うことで専用の動画配信システム「ココリンク(月額500円)」でセミナー視聴やカンファレンス参加ができるようになり、3年ごとの資格更新に必要となる単位が取得できるようになっています。

動画配信システムを使ったフォローアップ体制は珍しいですが、講習会は活発に行われており、利用者アンケートでは90%以上が満足しているという結果。自宅にいて好きな時間に研修動画が見れる手軽さや、グループワークでの交流やチャットでの質疑応答もできる点が高く評価されています。

活躍できる職場・メリットは?

介護施設の内観風景
ここ数十年で、最期のときを迎える場所として病院ではなく、自宅や慣れ親しんだ施設を望む人が増えてきました。厚生労働省の統計をみても、病院や診療所での死亡数は2005年をピークに減少に転じており、代わりに1990年ではゼロだった介護施設での割合が2020年時点で13.2%にまで増加。自宅で死を迎えるケースも横ばい~増加傾向にあります。

この流れは今後も続くとみられ、終末期ケア専門士の資格を持つ介護職は、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、グループホームや看護小規模多機能型居宅介護施設など、看取り介護を行う各種介護施設でニーズが高まることが予想されます。また、自宅での看取りをサポートする訪問介護士としても活躍が可能。

国家資格ではないためこの資格で募集されることはほとんどありませんが、現場でのニーズの高い資格として、事業所によっては数千円程度の資格手当が支給される場合があります。

身近な人との死別という悲しいできごとは、介護スタッフにとっても大きなストレス。また終末期ケアはまだ分かっていないことも多く、現場ではさまざまな迷いや葛藤があります。エビデンスに基づかないケアや行き当たりばったりでのケアでは、スタッフが過度なストレスを抱え込んでしまう心配も・・・。この資格を持った専門士が現場で活躍することで、本人や家族だけでなく周囲のスタッフも、安心して終末期ケアに臨むことができるでしょう。

後悔のない、穏やかな旅立ちを

手を握り看取る長年過ごした老人ホームなどの介護施設は、もはや本人にとって自宅そのもの。毎日顔を合わせる介護スタッフは家族同然の存在です。そんな慣れ親しんだ場所で、心を許した人たちに見送られ、おだやかに最期を迎えたいという人は増えています。

そうした流れもあって「終末期ケア専門士」は今後もさらにニーズが高まっていくと予想されます。介護職として働く以上、看取りとまったく無縁でいることは難しいはず。いざ大好きな利用者様とのお別れが近づいたとき、何の準備もしていなければ取り乱してしまうかもしれません。

「できるだけ不安や苦痛を取り除いてあげたい」「後悔のないようにお見送りをしたい」・・・そんな気持ちをお持ちの介護職の方は、きっと終末期ケアの専門知識を学ぶことが役に立ってくれますよ。

この記事をシェア

  • Twitter
  • facebook
  • LINE

週間人気ランキング

かいごGarden noteとは?

かいごGarden noteは、介護の求人サービス「かいごGarden」が運営する介護の情報サイトです。
介護のお役立ち情報や、介護の仕事のお悩み情報などを掲載しています。