高齢者介護に関係する資格は、初心者向けから超高難度のものまでたくさんあります。どれに挑戦するかによって得られるものは大きく変わるので、選択は慎重に行いたいところ。
このコラムでは全部で30種類の介護系資格をとりあげ、全体像をつかみやすいよう分類してご紹介します。きっとそのなかに「こんな技能を持った介護職になりたいな」と思える資格があるはず。
介護の仕事に興味をお持ちの方は、ぜひおすすめの取得順にも注目しながら最後までご覧くださいね。
国家資格、民間資格、公的資格の違い
介護の資格には「国家資格」「民間資格」「公的資格」の3種類があります。「国家資格」とは、国が法律に基づき、一定以上の知識や技術を持っていることを認定する資格。介護系の国家資格は「介護福祉士」のみで、社会的な信用度は抜群です。
一方「民間資格」には法律などの後ろ盾はなく、民間団体や企業が独自にカリキュラムなどを設けて認定します。信用度や内容はさまざまなので事前に調べておくことは必須ですが、自分の興味や学びたい分野に合致していれば、チャレンジする価値は十分あるでしょう。
「公的資格」は上記の「国家資格」と「民間資格」の中間にあたるもの。国の介護制度に組み込まれているため、信頼性が高く職場での評価にも結びつきやすいのが特徴です。初めて介護の資格に挑戦する人で、今後仕事に活かしていきたいと考えているなら、公的資格から優先的に検討するのがおすすめです。
おさえておきたい介護の主要資格
まずおさえておきたいのは、介護について全般的な知識を身につけられる基本の資格。入門資格から最上位資格までを順に見ていきましょう。1と2はとばして3から取得してもOK!まずは4の国家資格取得を目指すと良いでしょう。
1.生活援助従事者研修(公的資格)
ホームヘルパーが高齢者の自宅を訪問して掃除や調理などの生活援助を行えるようになる介護の入門資格。研修のカリキュラムは59時間。
2.介護職員初任者研修(公的資格)
介護の基礎について学べる介護の初級資格。1の生活援助従事者研修を受けていない場合、カリキュラムは全部で130時間。すでに1を取得している場合は、受講済みのカリキュラムを省略できる。
3.介護福祉士実務者研修(公的資格)
介護の基礎から医療的ケアの方法まで幅広く学べる資格で、国家資格「介護福祉士」の受験には必須の研修。1や2の研修を受けていない場合、カリキュラムは全部で450時間。すでに1や2を取得している場合は、受講済みのカリキュラムを省略できる。
4.介護福祉士(国家資格)
介護系で唯一の国家資格であり、安定性や信頼性の面でメリットが高い。介護の実務経験を3年以上・540日以上積んで実務者研修を修了するか、養成校や福祉系高校を卒業することで「介護福祉士」の受験資格を得られる。
5.介護支援専門員(ケアマネジャー)(公的資格)
保健・医療・福祉に関する国家資格保有者として、5年以上かつ900日以上の勤務実績を持ち、試験に合格したうえで介護支援専門員実務研修を修了すると取得できる難関資格。取得後はケアマネジャーとして利用者の相談に乗ったりケアプランの作成などを通じて活躍可能。国家資格ではないものの、介護福祉士からキャリアアップを目指して取得する人が多い。
6.認定介護福祉士(民間資格)
認定介護福祉士はキャリアアップを目指す介護福祉士のための上級資格で、受験するには介護福祉士の資格を取得したうえで5年以上の実務経験や100時間以上の現任研修などが必要。600時間の養成講座を修了し、認定申請の審査を経て取得できる、極めてハードルの高い資格。歴史が浅いため知名度は低めだが、介護系最上位の資格として高い技能を身につけていることが証明できる。
≫認定介護福祉士認証・認定機構HP
認知症ケア関連の資格
公的資格と民間資格の2種類を、大まかにではありますが難易度低→高の順に並べました。仕事に役立てたいなら公的資格を選ぶか、民間資格なら6の「認知症ケア専門士」が比較的メジャーな資格となっています。
1.認知症介助士(民間資格)
認知症の方への基本的な対応法が学べる。認知症の人と接する機会がある一般の人向き。
2.認知症介護基礎研修(公的資格)
認知症介護に最低限必要な知識や技術を習得するための、新任介護職に向けた資格。無資格で働く場合は受講義務があるが、初任者研修を受講すれば免除に。
3.認知症ライフパートナー(民間資格)
音楽や運動、園芸や調理などのアクティビティを用いた認知症ケアについて学べる資格。3級と2級は誰でも受験でき、1級は2級に合格することで受験可能。
認知症ライフパートナー検定概要(一般社団法人 日本認知症コミュニケーション協議会HP)
4.認知症ケア指導管理士(民間資格)
初級と上級があり、初級は誰でも受験可能。また上級も初級を取得してから1年経てば受験可能。
≫認知症ケア指導管理士(初級)認定試験 (資格取得キャリアカレッジHP)
5.認知症介護実践者研修(公的資格)
実務経験が2年程度の介護職向けの研修。1週間程度の講習・演習のほかに、自分が勤めている事業所での実習も必要。
6.認知症ケア専門士(民間資格)
認知症ケアの民間資格では比較的メジャーな資格で、3年以上の認知症ケアの実務経験があれば受験可能。5年ごとの更新制になっており、取得後も知識を更新できる。民間資格には珍しく施設によっては資格手当がつく場合もあり、業界での信頼性は高め。
7.認知症介護実践リーダー研修(公的資格)
認知症介護のチームリーダーとして活躍できる人材を育成する研修。おおむね5年以上の実務経験があり、実践者研修を修了してから1年以上経過していて、チームリーダーになる予定がある人が対象。
8.認知症介護指導者養成研修(公的資格)
認知症介護各研修の企画や、講師として指導ができる人材、認知症ケアの地域推進役を担える指導者を育成する研修。300時間以上の研修や4週間ほどの実習、修了考査など、ハードルの高い難関資格。
専門性を磨く資格
医療的ケア
喀痰吸引等研修(公的資格)
たんの吸引や経管栄養など特定の医療的ケアを行えるようになる資格。取得するには実務者研修で講義・演習を受けるだけではなく、さらに実地研修を行って届出をすることが必要。
住環境関連
福祉用具専門相談員(公的資格)
福祉用具についての専門知識を持ち、利用者の相談に乗ったり適切なアドバイスができる資格。
福祉住環境コーディネーター(公的資格)
医療・福祉・建築にまつわる知識をもとに、障がいがあっても住みやすい住環境を提案するための資格。
レクリエーション関連
レクリエーション介護士(民間資格)
高齢者とのコミュニケーション法や、レクの企画・実行方法について学べる資格。
≫レクリエーション介護士|日本アクティブコミュニティ協会HP
介護レクインストラクター(R)・認知症予防レクインストラクター(R)(民間資格)
高齢者の楽しみや意欲を引き出すレクの方法、また加齢による認知機能の低下をできる限り防ぐことを目的としたレクについて学べる資格。
≫介護レクインストラクター(R)・認知症予防レクインストラクター(R)W資格取得講座
福祉ネイリスト(民間資格)
高齢者や認知症の人などを対象にネイルケアやハンドトリートメントを行う資格。
音楽療法士(民間資格)
乳幼児から高齢者まで幅広い人を対象に、音楽を通じて支援できるようになる資格。
ガイドヘルパー
同行援護従事者養成研修(視覚障がい者ガイドヘルパー)(公的資格)
視覚障害者を対象に移動の介助や外出先での支援を行う資格。
全身性障害者ガイドヘルパー養成研修(全身性障がい者ガイドヘルパー)(公的資格)
全身性障がい者を対象に移動の介助や外出先での支援を行う資格。
行動援護従事者養成研修(知的・精神障がいガイドヘルパー)(公的資格)
知的・精神障がい者など、一人で外出することが難しい方を対象に、移動の介助を行う資格。
介護食関連
介護食士(民間資格)
介護食の調理に必要な知識を技術を身につけられる資格。通学で72時間のカリキュラムを受講し、筆記試験と実技試験に合格する必要がある。
介護食アドバイザー(民間資格)
通信講座で介護食をつくる技能を総合的に身につけられる。
介護食コーディネーター(民間資格)
安全でおいしい介護食の作り方が通信講座で学べる、一般向け資格。
終末期ケア関連
終末期ケア専門士(民間資格)
病気や老衰などにより死が間近となった方に対し、身体的・精神的苦痛を緩和し自分らしく生活する支援を行うための資格。医療や介護の有資格者で、実務経験のある人が対象。
看取りケアパートナー(民間資格)
看取りに必要な知識を通信講座で身につけられる。誰でも受験が可能。
自分らしいキャリア形成を
数多くある介護の資格ですが、初めて取得する場合はまず主要資格から検討を。介護系で唯一の国家資格である「介護福祉士」を目指しながら介護の経験を積み、自分の得意なことや深掘りしたい分野が見えてきたら、それらが学べる資格試験にチャレンジしてはいかがでしょうか。
全体としていえるのは、取得が難しい資格ほど、職場での信頼性や評価が高くなる傾向があること。プライベートではなく仕事で役立てたいなら、取得の簡単さではなく内容の濃さ、信頼性の高さで選ぶのが正解です。資格を上手に利用しながら知識と経験を積み、自分らしいキャリアを築きあげていきましょう。