「定年後も生きがいを持ち続けるため、第二の仕事を探したい」「今の仕事に限界を感じて」・・・様々な理由で、多くの方が年齢にとらわれることなく介護の仕事を始めています。
介護の仕事は「人と人との関わり」のため前職が何であれ、これまでの社会経験を活かすことができます。また、若いスタッフよりも介護を受ける方と年齢が近く、親近感を与えられるため、重ねた年齢もプラスになることが多い職種。今回は、介護職の実際の年齢層や、年齢を問わず活躍しやすい理由、年齢を重ねていることのメリットをお伝えします。また介護の仕事を始める際に注意しておきたい点についてもふれています。
覚えることも多かったり、気を使ったりすることもありますが、高齢化が進む現代において、介護職は高い将来性を約束されたお仕事。今からでもまったく遅くはありません。セカンドキャリアとして、手に職をつけられる介護職にチャレンジしてみませんか。
【最新調査】令和3年度の介護職の現状
1.約7割の事業所が「65歳以上の働き手」を雇用。平均年齢は47.7歳
介護労働安定センターが公表した「令和3年度介護労働実態調査結果」によると、65歳以上の働き手がいると回答した事業所は68.0%にのぼります。そのうちの45.2%が介護職員として勤務しており、職種別の割合では最も高い結果となっています。
表:勤務する職種別に65歳以上の労働者数がいる事業所の割合
職種 | % |
訪問介護員 | 34.1% |
サービス提供責任者 | 7.7% |
介護職員 | 45.2% |
看護職員 | 29.8% |
生活相談員 | 4.4% |
PT・OT・STなど※ | 1.6% |
介護支援専門員 | 13.2% |
その他 | 28.7% |
無回答 | 1.5% |
※PT:理学療法士、OT:作業療法士、ST:言語聴覚士
公益財団法人介護労働安定センター令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について,p.3図,表3より作成
全体の属性をみると女性が71.1%、男性が19.8%と圧倒的に女性が多く、平均年齢は47.7歳となっています。男女別の年齢分布では、男性は「40歳以上45歳未満」が18.6%、女性は「50歳以上55歳未満」が15.8%とそれぞれ最も高い割合を占めています。これらの結果から、介護職は40代50代、とくに女性が活躍している業種であることがわかります。
別の調査では、介護職員の勤続年数は勤続2年が8.8%と最も高く、次いで勤続3年が8.4%となっており、勤続年数が浅い人の割合が多いことが明らかとなっています。
40~50代の働き手が多いことに加え、勤続年数が浅い人の割合も多いという点から、介護職は経験や年齢を問わずチャレンジしやすい仕事といえるでしょう。
厚生労働省老健局老人保健課,令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果,p.275,第138表より作成
また、割合はやや小さくなるもののシニア世代と呼ばれる55歳以上の働き手も活躍しており、介護職は長く働き続けられる仕事ともいえるでしょう。
年齢分布(全体) | |
20歳未満 | 0.1% |
20歳以上25歳未満 | 1.6% |
25歳以上30歳未満 | 4.3% |
30歳以上35歳未満 | 7.0% |
35歳以上40歳未満 | 9.9% |
40歳以上45歳未満 | 13.4% |
45歳以上50歳未満 | 13.8% |
50歳以上55歳未満 | 13.1% |
60歳以上65歳未満 | 8.6% |
65歳以上70歳未満 | 4.6% |
70歳以上 | 2.7% |
無回答 | 10.0% |
出典:公益財団法人介護労働安定センター令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について, p.13,図表19 より作成
2.介護職の多くが異業種からの転職。無資格でも戦力に
同調査で「前職が介護・福祉・医療関係以外の仕事」と回答した人は63.1%で、介護職に就く人の大半が異業種からの転職であることが明らかとなっています。
この理由として考えられるのは、高齢者人口が増える一方であるいま介護市場は拡大を続けており、介護職は将来性のある仕事ということ。加えて、介護職が無資格でもチャレンジしやすく、活躍できる仕事であることです。
介護士の場合、無資格であっても食事介助や入浴介助、排せつ介助といった被介護者のからだに直接触れておこなう身体介護や、掃除や洗濯など被介護者のからだに触れない生活援助、送迎、事務などの業務を担当することができます(訪問介護を除く)。つまり、資格がなくても十分に介護士として働けるということ。また、介護の仕事はコミュニケーションスキルも必要とされるため、これまでの社会経験が役に立つのです。
ただし、平均給与は有資格者のほうが高いため、介護職に就いたあとは積極的に資格取得を目指すことをおすすめします。
※現在は努力義務である「認知症介護基礎研修」が2024年からが完全義務化となりますが、1日あれば修了できるカリキュラムのため負担は少ないでしょう。
介護の平均給与についてはこちらのコラムで詳しく解説しています。
重ねた年齢がプラスに働く3つの理由
1.仕事に人生経験が役立つ
老人ホームなどの介護施設で働く際には、あなたのこれまでの人生における人との関わり、その全てが役立ちます。それは、介護職が「人」を相手にする仕事だから。施設の利用者様だけではなく、一緒に働くスタッフや看護職員などとの連携、利用者様のご家族とのやりとりなど、どんなときでも相手の気持ちを考えながら、冷静に行動することが欠かせません。
こういったスキルは、社会経験の少ない若い年代の方よりも、人生経験を積んできたミドル~シニア世代の方のほうが高い傾向にあります。たとえばずっと営業の仕事をしてきた方なら、相手の心を解きほぐして懐に入る話術が役立ちます。主婦の方なら、ご近所・親戚付き合いで培った気遣いや、子育て経験も活きるでしょう。相手の立場に合わせた柔軟な敬語の使い方などにも慣れているはずです。
人を不快にさせない接遇マナーが、社会人としてすでに身についている点は大きなメリットとなります。
2.利用者様と価値観が近く、共感しやすい
介護施設でサービスを利用されている方のボリュームゾーンは80代前後。働くミドル~シニア世代からすると、ご自身の親世代かもしれませんし、ときにはほぼ同年代だという方もいるかもしれません。
いずれにせよ利用者様の立場から見ると、孫やひ孫のような新卒の若い世代よりも、年齢は近いはず。趣味や幼い頃の思い出、家族のことや健康の悩みなど、様々な話題で共感しやすいのではないでしょうか。
介護の仕事では、利用者様との何気ない会話の積み重ねから信頼関係を築いていくので、共通の話題があることは大きなメリットといえるでしょう。
3.若い世代と違う時間帯で働ける
20代、30代の働き手は、共働きをしていたり子育て中だったりすることが多いもの。小さな子どもを預けて働いている場合、働けるのは保育園が開いている朝から夕方までということがほとんどです。そんなときに活躍できるのが、時間に融通がきくシニア世代です。
たとえば介護施設の働き手が少なくなる早朝の時間帯、若い世代が出勤してくるまでの数時間、空いている時間を活かして働くことも可能です。体力的にフルタイムで働くことが難しくても、自分にできる範囲で働くことで、社会貢献をしながらしっかりお金も稼ぐことができたら嬉しいですよね。
シニア世代が介護職を始めるときに気をつけるポイント
先述の通り介護職では年齢とともに重ねてきた経験を活かすことができますが、周囲の人よりも高齢である以上、気をつけるべきこともあります。
1.素直で謙虚な姿勢を心がける
シニア世代の方が介護職に就く場合、一緒に働くスタッフや上司は自分よりも年下であると考えてよいでしょう。社会経験は自分のほうが豊富だからといって、自分のやり方や意見を押し通すようなことがあっては、指導する側も手を焼いてしまいます。素直に指導を受けられないと仕事覚えもスムーズにいかないでしょう。また、パソコンやタブレットなど電子機器の操作が苦手だからと、使い方を覚える努力をしないのもNG。早く介護の仕事に慣れて職場になじむためにも、初心を忘れずに謙虚な姿勢で仕事に臨みましょう。
2.体に無理な負担をかけない
シニア世代にとって大きな問題は体力面です。若いスタッフたちと同じくらい体力があり機敏に動けるシニア世代は少なく、無理に負担をかけるとあっという間に腰を痛めるなどのケガにつながります。せっかく楽しく介護の仕事ができていても、こうなると辞めざるをえなくなることも・・・。ボディメカニクス※による介護を心がけるとともに、体力的に困難なことは先輩スタッフや上司に相談しましょう。
※ボディメカニクス:人間の筋肉や骨格に基づき、力学的関係を利用した介護技術。小さな力で体を支えたり、動かしたりできる
介護職は何歳からでもチャレンジできる
介護の仕事は、異業種からの転職者が多い・働き手は50代前後が多い・無資格でも働ける・将来性があるなど、年齢を重ねた人にとってもチャレンジしやすい仕事です。子育てが落ち着いて50歳から働き始めたとしても、10年後はまだ60歳。公的年金の支給開始年齢は65歳のため、体力的に働けるうちは仕事を続けていたほうが金銭的に安心ですし、生活にハリもでるでしょう。また、介護の仕事で得られる知識やスキルは、自分の親やパートナー、あるいは自分自身の身に何かが起こって介護が必要になったとき必ず役に立ちます。
自分の経験を活かしながら手に職をつけ、長く働いていきたいという方はぜひ介護職を検討してみてくださいね。