居宅介護支援のアセスメント。介護スタッフの視点の取り入れ方

介護の仕事

カウンセリングをする女性ヘルパー

介護サービスのはじまりであり、利用者さんの課題(ニーズ)を聞き取るアセスメント。利用者さんのご自宅に訪問する居宅介護支援(ケアマネジメント)のはじめの一歩です。

アセスメントの作成には、「利用者さん」「ケアマネジャー」、そして「介護スタッフ」の3つの視点が欠かせません。利用者さんのご自宅に訪問するのはケアマネジャー1人ですが、そこに実際にケアをする介護スタッフの声を生かせば、より実際のケアに寄り添ったアセスメントができます。

このコラムでは、現場に立つ介護スタッフがケアをはじめるにあたって「もっと知りたい!」と思っていることを説明していきます。正しいケアにつながるアセスメントに、現場の介護スタッフの声を生かしてみませんか。

アセスメントで介護スタッフの声が必要な理由

ケアカンファレンスする介護スタッフたち

アセスメントとは、適切なケアプランを作成するにあたり利用者さんの課題(ニーズ)を見つけるためにさまざまな情報を集め、分析をすることです。1時間程度を目安に、本人やご家族に聞き取りをおこない、それを元に利用者さんの課題を解決するケアプランを作成します。

聞き取った情報は膨大な量になりますが、それらがすべてケアプランにつながるわけではありません。居宅介護支援で得られる情報には「必要な情報」と「不要な情報」が混ざっています。それを整理してケアプランを作成していくのが、ケアマネジャーの仕事です。

ところが「不要」だと切り捨てている情報のなかには、介護スタッフにとっては必要な情報があることも少なくありません。仕事をする介護スタッフたちが「このことはもっと早く聞いておきたかった」「最初から知っておけば違うケアもできたのに」と思うことが実際に起こっています。

現場がどんな情報を求めているかを知ることができれば、よりニーズにフィットしたケアプランの作成に役立ちますし、頼れるケアマネジャーとして、厚い信頼を得ることにもつながるでしょう。

アセスメントで聞かなければいけない課題分析標準23項目

アセスメントのなかで質問しなければいけない項目は国から定められており、全部で23種類あります。ただし、これを1から順番に聞いていくだけでは居宅介護支援として不十分。目的は項目を埋めることではなく、利用者さんのニーズを聞き出し、その後のケアにつなげていくためだということを忘れないでください。

課題分析標準23項目

【基本情報に関する項目】
①基本情報 利用者受付情報、指名、性別などの基本情報
利用者以外の家族の基本情報など
②生活状況 利用者の現在の生活状況、生活歴など
③利用者の被保険者情報 介護保険、医療保険、生活保護、
身体障碍者手帳の有無など
④現在利用しているサービスの状況 介護保険給付の内外に問わず、利用者が現在受けているサービスについて
⑤生涯高齢者の日常生活自立度 ランクJ~Cであらわす
⑥認知症高齢者の日常生活自立度 ランクI~Mであらわす
⑦主訴 利用者や家族の主な希望、要望
⑧認定情報 要介護状態区分、審査員の意見、支給限度額など
⑨課題分析(アセスメント)理由 当該課題分析(アセスメント)の理由
【課題分析に関する項目】
⑩健康状態 利用者の既往歴、主傷病、症状、痛みなど
⑪ADL(日常生活動作) 寝返り、移乗、歩行、着衣、入浴、排せつなど
⑫IADL(手段的日常生活動) 調理、掃除、買い物、金銭管理、服薬状況など
⑬認知 日常の意思決定を行うための認知能力の程度
⑭コミュニケーション能力 意思の伝達、視力、聴力など
⑮社会との関わり 社会的活動への参加意欲、社会との関わりの変化、喪失感や孤独感に関する項目
⑯排尿・排便 失禁の状況、排尿・排泄後の後始末、コントロール方法、頻度など。
ポータブルトイレ、おむつの使用状況
⑰じょく瘡・皮膚の問題 じょく瘡の程度、皮膚の清潔状況など
⑱口腔衛生 歯・口腔内の状態や衛生など
⑲食事摂取 栄養、食事回数、水分量など
⑳問題行動 暴言、暴行、徘徊、介護の抵抗、収集癖、火の不始末、老ける行為、紡織行動など
㉑介護力 介護者の有無、介護者の介護意思、介護負担、主な介護者に関する情報など
㉒居住環境 住宅改修の必要性、危険個所など
㉓特別な状況 虐待、ターミナルケアなど

では、介護スタッフが現場に伝えてほしいと思っているポイントを、事例でくわしく説明していきます。

介護スタッフが知りたい、見落とされがちなポイント3つ

ヒアリングする介護ヘルパー

1.ご家族の状況

ご家族の状況は、たとえアセスメントで詳しく聞いていても、ケアプランにするときに「主な介護者」と「同居人」以外の情報は削られがち。ですが、ほかのご家族のことも知りたいというのが介護スタッフの本音です。

後から知って「あっ」と驚く事例:「居宅に見知らぬ人がいる!」
たとえば利用者さんのご自宅を訪問したときに、見知らぬ人がいると動揺してしまいます。この場合、話を聞けば次女さまだと分かったそうですが、アセスメント時に「主な介護者さまのほかに、利用者さんのご自宅を訪問されることのあるご家族はおられますか?」と聞き、介護スタッフに伝えていればあわてることもありません。

後から知って「あっ」と驚く事例:「同居者の奥さまが不在」
また、同居しているはずの奥さまがいらっしゃらないと、介護スタッフは不審に思いますね。老々介護が社会問題になっている現代社会において、夫婦が揃って介護保険のサービスを受けられていることも珍しくありません。しかし、夫婦が別々のケアマネジャーに担当してもらっていると、このようなすれ違いが起きやすくなります。

「同居者の奥さまはデイサービスをご利用中」と曜日や時間を把握しておくなど、ご家族の介護サービスの利用状況も聞いておけば安心です。本人のことだけでなく、同居者の情報もきちんと共有していきましょう。

2.一歩踏み込んだ病歴

治療中の病気、現在飲んでいるお薬はケアプランに明記されることが多いですが、一方で過去の病歴については触れられないことがあります。病歴はご本人の生活や行動と結びつくことがあるため、よく考察をして、介護スタッフに伝えるべきポイントです。

たとえば、膀胱炎の病歴がある利用者さんは、再発を防ぐために水分補給を控えているかもしれません。また、過去の病気が直接、介護に影響するパターンもあります。

後から知って「あっ」と驚く事例:「感染症の病歴をお持ちだった」
ケガの治療を終えたあとに知ってヒヤリ。C型肝炎などの血液感染する病気はたとえ完治していても、油断はできません。利用者さんの健康状態を正しく伝えるという意味でも、介護スタッフの健康を守るという意味でも、過去の病歴を詳しく聞いておくことは大切です。

3.利用者さんができること

ADL(=日常生活動作 移動・食事・排せつ・入浴・更衣・洗面など)やIADL(=手段的日常生活動作 買い物・洗濯・掃除といった家事全般や交通機関の利用・服薬や金銭の管理など)の項目は「できないこと」が主に伝えられます。しかし、介護保険は自立援助を理念に掲げているため、できることはご自身でやってもらうというのが基本的な考え方。お話を聞いてすぐに「できないこと」と割り切るのではなく、「こちらで雑巾をしぼれば簡単な拭き掃除はできますか?」などと前向きに問いかけてみましょう。

後から知って「あっ」と驚く事例:「実はできると言えずにいた」
最初から「できないこと」と決めつけて話を進めてしまうと、利用者さんも言い出すタイミングを逃してしまいます。前向きなことが聞きたいときは少しアプローチを工夫しましょう。

利用者さんの経歴から「旅行が好きだったけど、最近はできていない」とあれば、「また行きたい」と思っていらっしゃるかもしれません。そういう情報を共有できていれば、介護スタッフもトイレへ誘導するときなど、「旅行に行くために、歩く練習になりますよ」と前向きな声かけができるようになります。

利用者さんと介護スタッフをつなぐ架け橋になろう

高齢者に寄り添う女性ヘルパー

訪問ヘルパーや施設で働く介護スタッフには、利用者さん一人ひとりとゆっくりお話をする時間はなかなかありません。利用者さんとひざを突き合わせて話ができるのは、ケアマネジャーが居宅介護支援(ケアマネジメント)のために訪問する機会くらいでしょう。

居宅介護支援では、利用者さんの声を現場に届けるだけではなく、現場の声を利用者さんに届けることも必要です。

そこを忘れないようにすれば、利用者さんからは「実際のケアのことまで考えて、私と向き合ってくれている」という安心感を、介護スタッフからは「自分たちでは手の届かないところをサポートしてくれている」という信頼感を寄せられるようになっていくでしょう。

利用者さん、介護スタッフ、ケアマネジャーと立場はそれぞれ違いますが、「介護をよりよいものにしたい」という気持ちは同じ。三者がより固く強く結びつくためにも、アセスメントに介護スタッフの視点も取り入れることを意識してみてくださいね。

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