介護職の「個人目標」の設定は、すぐできそうに見えて意外に難しいもの。初めのうちは、とりあえず目の前の仕事を覚えることを目標にしていればよかったかもしれません。しかし、一通り資格も取得し仕事も覚えてしまうと、「次は何を目標にしようかな」「何も思いつかない、どうしよう」と困った状況になることがあります。
そもそも人の成長は切れ目なく続いていくものなのに、毎回その場限りで違う目標を考えていれば、いちいち何を書こうかと悩むことになるのも無理はありません。今回ご紹介する方法は、何のために個人目標を設定するのかを深く考え直し、本当の自分の目標を明らかにしていく方法です。
「こうなりたい」というビジョンを元に発想していくやり方なので、新人職員から中堅職員、管理職など、どんな立場であっても応用がききます。イメージがわきやすいよう具体的な例文も交えながら、そのポイントをお伝えしていきましょう。
個人目標は何のため?
各自のスキルアップに役立てるため
個人目標には、自分の目指す姿を明文化することによって、効率良くスキルアップを目指していくという狙いがあります。事業所側が作って押しつけた目標ではなく自発的に考えた目標なので、それぞれのレベルに合った目標となる点もメリット。
立てた目標をどの程度達成できたかを定期的に振り返ることによって、それぞれのスキルアップを効率良く進めていくことを目指しています。
生産性の向上につなげるため
職員がそれぞれにスキルアップを達成し個人の能力を上げることによって、事業所全体の生産性向上にもつながります。
事業所側が人事評価の参考にする
事業所側にとっては、人事評価の際に参考とする目的もあります。設定した個人目標は、振り返ってどのくらい目標を達成できたか考える自己評価とセットになっていることが多いもの。
もちろんそれだけで人事評価が決まるわけではありませんが、管理職にとっては大切な判断材料のひとつです。設定する際にはそれも考慮したうえで、自分のためだけでなく組織にとっても有用なもの、また努力すれば実現可能な範囲内のものを考えていきましょう。
個人目標の設定 STEP1
目標の「エネルギー源」を考えよう
個人目標が思いつかないからといって、インターネットなどで例文を借りてくるのはおすすめしません。これから先、何度も個人目標を提出する機会は出てきます。借り物の目標は自分の内側から出てきたものではないので成長につながらず、いざ振り返りの段になって慌てることになるでしょう。
長い目で見て効率的なのは、「何のために仕事をしているのか」「自分はどうなりたいのか」を一度じっくり考えること。それのためなら本当に意欲を持てるという、やる気のエネルギー源になる部分です。
どうして自分は介護の仕事を始めたのか――たとえば「人の役に立つのが好きだから」「高齢者と関わることが好きだから」「身内が介護施設にお世話になったので、自分も興味を持った」など、人それぞれ考えられますね。
もちろん「生活するため」「ほかに仕事がないから仕方なく」という人もいるかもしれません。ここは正直でなければ考える意味がなくなってしまいます。エネルギー源は施設に提出するわけではありませんので、安心して本音で考えていきましょう。
介護職員の立場でいくつか考えられる例を挙げてみます。あなたの気持ちにフィットするものがあるでしょうか。「これ、近いな」と思うものがあったら、自分の思いにぴったりくるように手を加えてみてください。
- もっと介護で役に立って、たくさんの人にありがとうと言われたい
- あこがれの○○先輩のような介護職になりたい
- 尊敬し合える仲間と一緒に仕事がしたい
- 昇進して給与を上げたい
- 自分で介護施設を立ち上げてみたい
- 時間内に仕事を終わらせて、早く帰りたい
- 希望日に休みたい etc…
個人目標の設定 STEP2
そのために何ができるか、何が足りないかを考える
自分にとってのやる気の源が見えてきたら、次は「そのために自分に何ができるか」「何が足りないか」を具体的に考えていきましょう。ここでは上記の例のなかから2つ取り上げて、具体的な行動目標に落とし込んでみます。
「尊敬し合える仲間と一緒に仕事がしたい」と思うなら
仲間と円滑にコミュニケーションをとり信頼関係を深めていくために、今職場で何が足りていないか、自分にできることは何かを考えてみましょう。
新人職員の個人目標の例:「目を見て相手の名前を添えて挨拶をする」「何かをしてもらったらお礼を言う」etc…
中堅職員の個人目標の例:「1日1つ同僚の良い行動を見つけて感謝を伝える」「新人指導の際、必ず本人のがんばりを認める言葉を添える」etc…
「希望日に休みたい」と思うなら
自分が希望日に休むためには、協力してくれる仲間の存在が必要不可欠。そのためにできることとしては、仲間が休むときには快くヘルプに入ることや、新人が定着して離職率が下がるような働きかけも有効と考えられます。
個人目標の例:「人員が足りないときは可能な範囲でシフトに入る」「急に休んでも業務に支障が出ないよう、その日のことはその日のうちに情報共有する」「新人教育マニュアルを手直しする」 etc…
個人目標を立てるときのコツ
後で振り返ったとき、どのくらいできたかを客観的に評価できるように、なるべく具体的な内容にしていきましょう。たとえば、以下のような具合です。
- 「挨拶を頑張る」⇒「顔を見て挨拶をする」
- 「うまくできるようになる」⇒「先輩にコツを教わり、自分でも練習する」「研修に参加し知識を習得する」
- 「いつも笑顔で利用者様と接する」⇒「ケアに入る前に利用者様と必ずコミュニケーションをとる」
「しっかりやる」「がんばる」といったザックリとした目標だと、どの点をどう頑張るかがハッキリせず、評価基準があいまいになってしまいます。すると自分では100点満点のつもりでも、違う視点で見られたときに全然できていないという評価を受けることも…。
自分にとっても周囲にとっても、評価に納得感を持つため目標を具体的にすることは重要です。また、目標は高すぎても低すぎても成長につながらないため、努力すれば自分にもできる程度の範囲で設定していくことも大切です。
正しい目標設定で成長を目指そう
個人目標を考えるのは、意外に時間がかかって面倒。だからといってどこかから借りてきた借り物で済ませてしまえば、やる意味がなくなってしまいます。立てた目標のことなどすっかり忘れてルーティンワークの日々が過ぎ、また数ヵ月後困ることになる…ありがちなパターンではないでしょうか。
自分が本当にしたいこと、自分が本当になりたい自分を明らかにすれば、いつも心のなかにその目標を持って仕事ができます。
たとえば、「残業を減らして早く帰りたい」という思いが強いことに気付いたら、ストックルームを片付けるという一見無味乾燥な仕事も「これで毎回の作業が効率化できる!」「みんなの手間が減ってチームが楽になる」と、高いモチベーションを持って取り組めるはず。
絶対に達成したい自分のなかの強い思いを見つければ、もう昨日までの繰り返しや指示待ち姿勢ではいられなくなります。意欲的に仕事に取り組めるようになり、目が覚めたように仕事が楽しくなるかもしれません。今までやってこなかったという人は、ぜひ目標設定の前に自己分析からチャレンジしてみてくださいね。